悪気なく植え付けられる罪悪感から逃げろ(1)

一月ほど前、日経DUALと日経ウーマンオンライン、そしてノルウェーの新聞aftenpostenで、続けざまに「日本のワーキングマザー」の記事を読みました。

まずは日経WOMANオンライン。
これは去年の夏に配信された『子供より仕事?残業理由は「育児したくない」』

この連載はカワイさんと、独身キャリア女性という設定のニケさんの会話で進むわけですが、育児したくないという理由で残業してしまう女性をカワイさんは褒め、ニケさんは「ひどい、そんなの子供がかわいそう。母親失格だ」と言います。
そうですね、ワーキングマザーとしてフルタイムで働いてると、こういう反応はほんとうに多いです。
仕事で業務が集中すると、テトリスをやっているような、音ゲーをやっているような感覚になることがありますよね?(ないですか?)
はい、これクリア!次はこのステージ!!
私がゲーマーだからかもしれませんが、よくある状況です。
子供が小さいうちは、本当は子供とゆっくりしたくても、どこかそういう状況になります。何が悲しいって、「子供を迎えに行こう(はーと)」ではなく、「迎えに行かなくちゃ!ああ、なにこのおっさん!なんで帰る寸前に話しかけて来るの、フザケンナ!ああ、このおっさんは朝は早く歩くだろうに、なんでこんなに歩くのとろいの?おい、そこ広がるな!邪魔だー!」と心の中で悪態つきながら、時には心の声の一部がもれて「ったく、ジャマ!」といいながら、走り抜けるわけです。駅まで。
こうなってくると、お迎えも集中する業務の一つ。つまり、ボス戦。
子供をゲットしたら、今度は家に帰るわけですが、
ヘロヘロで沢山の荷物抱えてるところに、「お母さん、だっこー!!」
マジか。腰割れそうだけど。かわいいからだっこするけど重いっつーの。
スーパーやコンビニによると、「あれ、買ってー」。自宅に到着してごはんの用意して、子供が寝て、朝起きると保育園行く寸前に、夫から「この間出したシャツまだ洗ってないの」とかいわれたりして、「いつもありがとうくらい言えないのかコイツ」と喧嘩になったりするわけです。

その合間合間に、「フルタイムで働いてるなんて、◯◯くんさびしがってるよ、きっと」だとか、小学校にはいれば、大量の宿題がまっていて、丸付けまでが母親の仕事みたいに言われ、うっかりしてると「なんで提出書類が出てこないんですか」とか職場に電話がかかってきたりして。

育児は当たり前で褒められるものではないかもしれないけど、責められることだけはもう大量に。あまりに続くと「知りませんよ、そんなこと」とか返して、余計にひどい人レッテル貼られるという悪循環。

この記事でも、その辺りのことをうまい具合に表現しています。


カワイ 育児は不測の事態だらけです。主導権を持っているのは子どもで、母親のコントロール下にありそうで、ない。
 一方で仕事では、ある程度自分でコントロールできる。うまくいったときには、上司や会社が評価してくれることもある。育児ではどう? 誰か評価してくれるのかな? 仕事では「よくやった!」と褒めてもらえても、育児では「よくやった!」と労ってくれる人はいない。

ニケ 子どもの笑顔が最高の評価です!

カワイ 子どもの笑顔に救われることはたくさんあるでしょう。でも、その笑顔だけではどうにもならないくらい、しんどいこともあるんじゃないかしらね。とにかく忙しすぎるのよ。
 育児と家事をやるために、会社にいるときは時間と責任に追いかけられる。家に帰っても、時間と責任とに追いかけられる。
 そんな日々が続いたら、どう? 仕事には終わりがあっても、育児には終わりがない。

ニケ ウッ……。そ、そうかも……。そっか! 忙しすぎることが、問題なんですね! どんなに育児をテキパキこなしても、ソレが当たり前、だから、誰も褒めてくれないし……。あ~、そうかそうか。褒めてもらえない、労ってもらえない、こんなに忙しい! こんなに頑張ってるのに! って、なっちゃうってことですね。

日経の記事は失礼ながら「痒いところに手が届くタイトルをつけておいて、中身は届かずに終わる残念っぷり」な記事が多いと感じるのですが、この記事だけは「よくやった」と素直に思いました。
ところで、この記事の中で、ニケさんが「(残業のほうがいいなんて)おっさんと変わらない」という箇所があります。そう、男性は小さい子供がいて残業してても「奥さんも小さい子抱えて大変だろうし、子供も寂しがるだろうから早く帰りなよ」とは言われないのですよね。

はっきりと、育児を通して「罪悪感」を埋め込まれるのは、女性に限ります。

さて、その、「悪気なく女性に罪悪感を埋め込む」記事が、同じ日経系の日経DUALに先日配信されました。

『”ワンオペ育児”の女性を、同僚男性が支える悪循環』という記事です。

「怒れ!30代」というシリーズの記事ですが、痒いところに手が届くどころか、掻きむしってしまっているような記事だと私は思います。

・妻がカワイイ妻でいようと思うあまり、なんでもかんでもやってあげるから男は父親になれない

・ワーキングマザーの残った仕事を同僚男性がフォローするから、それが別家庭のワンオペ育児を生む

・自分の旦那を変えるところから始めよう

という記事です。うん、こういう記事を信じた時代が私にもありました(遠い目)

でも、間違ってます。これって、要するに「人の旦那に仕事のフォローしてもらって家庭円満にしようと思うなよ、自分の旦那にどうにかしてもらえ。え、どうにもできない、それはお前の教育が悪いからだ」ってことですよね。
つまり、男性(夫)に父親のの自覚がないのも、ワンオペ育児になって辛いのも女性の自己責任ってことになるわけです。
おそらく、そんなつもりで書いた記事ではないとは思いますが。

はっきり言います。
他人を変えるのに責任を持つことはできません。
というか、他人を変えることなんてできません。
少女漫画にありがちな、屈折した主人公男子が自分にだけは心を開いてまじめになるとか、それはファンタジーです。

愛していようかなんだろうが、自分が相手を変えるきっかけになるだなんて、そんなおこがましいこと、考えないほうが良いです。
それよりも、自分の子供たちに「家事のかは、家族のかであって、嫁ではない」と教えるべきです。それが将来、ワンオペ育児を普通に思ってしまうような環境を次の世代に残さないための土台となるからです。
専業主婦が当たり前だった時代にそだった男性が、仕事を持つ嫁に自分の母親と同じものを求めるわけです。だからこそ、男の子には家事は家族でやる仕事だと教えるのが大事だと思います。
そして、そうやって育てていれば、自分の家事も楽になる可能性が出てきますしね。
育児の悩みは、尽きないとしても。家事からは若干解放されるかもしれません。

夫を変えようとして変えられないことに責任を感じて、子供の忘れ物に責任を感じて、仕事も責任を感じて。
そうやっていきつく先は、あまり楽しくないですよ、経験者としての発言ですが。

個人的に、一番大事なのは、この手の「罪悪感を悪気なく埋め込む記事から逃げる」ことだと思います。
もちろん、仕事上で業務や意識のすり合わせをするのと同程度に、「協力者として」夫との意識のすり合わせや分担は大事です。
でも、意識合わせしても違うことをやってしまう同僚の責任は取れませんよね。
意識合わせしようと声をかけても無視する同僚の責任も取れません。
言い方を工夫するとか、他の人に変わってもらうとか、対策は取れるかもしれませんけど。

同様に、相手を変えることに変えられなかったことに責任を感じる必要はないですし、なにより、この記事では時短勤務なんかした日にはすごく責められそうです。
仕事で大事なのは、やるべきことをやること。
私には時短勤務の先輩がいますが、彼女達はフルタイムの男性以上にパワフルで、尊敬します。

もし、自分の業務を他の同僚におしつけてると感じるのであれば、自分の仕事の方法を振り返って改善してこなせるようになれば良い、それだけです。
それこそ、方法なんていくらでも転がってるのだから、試せばいいだけです。

繰り返しますが、あなたの夫が育児に非協力的なのはあなたのせいではなく、育ってきた環境のせいです。そんなことに頭を悩ませる必要はこれっぽっちもありません。
そして、これは自分でも最近気がついて驚いたのですが、子供が困った状態に陥ったとき、「自分がフルタイムで働いていて、子供に寂しい思いをさせたからバチが当たった」と思ってしまうのも、間違ってます。

(続く)


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Tomoko

Tomoko

Morten Harket.jp (http://www.morten-harket.jp/)の中の人。 二児の母で、フルタイム勤務しつつ、ノルウェー語の勉強をしています。 現在、NORLAからサポートを受け、ノルウェー語の詩の翻訳を実施中。

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