amazonプライムで『今夜、ロマンス劇場で』を見ました。久々に映画を見て泣きました。以下、ネタバレありです。


一言でいうと「これはよく出来た”Take On Me”」。様々な映画がオマージュされているということでしたが、最初の白黒の姫が振り向くシーン、手を伸ばす現実側、そして倒れて現れる姫。最後の姫が服を慌ててきて走るシーン。これは間違いなく『Take On Me』でしょう。似た設定といえば、真っ先に浮かぶのは『カイロの紫の薔薇』ですが、こちらはヒロインが映画の中に入っていくので逆ですよね。

この映画では、『カイロの紫の薔薇』とは男女が逆ですが、それは日本の場合、「いつか王子様が」ではなく「いつかお姫さまが」文化なので、ある意味、当然の帰結だと思いました。なにせ、グリム童話やアンデルセン童話では、辛い目にあっているお姫さまの元に王子様が偶然現れるパターンですが、日本の昔話はたいてい村の若者のもとに姫が突然現れるパターンだからです。なので、まあ「女性がファンタジー側」なのは、割といつものパターンだなと。

ストーリーとしては、最初のほうこそ、姫の傍若無人ぷりに見るに堪えない場所もありましたが、姫のお守りを彼が探してあげた後は、二人のやりとりにほのぼのできました。見終わったあと、感想を検索したら、恋愛ストーリーが盛り上がりに欠けるといった感想もみかけましたが、私はこれくらいのほうが好きです。後になって、シナリオハンティング中の電話ボックスを使ったシーンも、「ああ、触れたら消えちゃうからだったのか」と思うと、姫はこの時点で彼に惹かれていたのだろうし、切ないなと。

映画館のおじさんが経験者だったというのも良かったです。夢があって。mしかして、コレクターに売ってしまうというのも、姫に夢中な彼をみかねてきっかけをつくったのではないかとすら思えました。

そして何よりよかったのが、加藤剛さん。坂口健太郎さんと加藤剛さんがそう似ているとは思えないのだけれど、でも、最後のシーンでの目をつぶっての笑顔は、坂口健太郎さんの姫に見せる笑顔とそっくりな雰囲気を醸し出していて、ちゃんと同一人物なのがわかるっていう。演技上手い人って、他の俳優の雰囲気にすら寄せることが出来るんだなと思いました。坂口さんと加藤さんが一人の人間を演じたわけですから、二人の間で役作りの話とかもあったのかもしれませんが、それにしても最後のシーンの笑顔は驚きました。浜辺の散歩シーンも本当に坂口さんから加藤さんへの流れがまた自然でしたしね…。そうですね、坂口さんと加藤さんの二人だからこそ、同じ役をちゃんと同じ人物に見えるようにできたのかもしれません。

そして最後のシーン。「最後のシーンは君が一番欲しかったものをあげる」というシーンに、撮影所の仲間達、映画館のおじさん、そしてハンサムガイ。みんないて、そして姫の好きな赤い薔薇で全てが色づくというシーン。これは本当に素敵でした。毎日代わり映えしない日々を嘆き、色のある世界を羨ましく思い、彼に触れられないことが悲しかった姫に、とびきり何を楽しい仲間達と色づく世界と、そして触れられる自分。本当に最後まで姫の我が儘を全部聞いてあげたのだと思うと、胸が熱くなりました。

「カイロの紫の薔薇」では、ヒロインは現実にいるほうの俳優を取ってしかも捨てられてしまうわけで、個人的にはどこが傑作かわからないと思っていますし、『Take On Me』は、続きの『The Sun Always Shines On TV』の冒頭のせいでハッピーエンドでなくなってしまったので納得いかないのですが(あまりに納得いかなくて平安時代をベースに御伽草子の若者と姫の二次創作にしたことがあるほど)、この映画ではこの世を全うし、更に姫の世界で幸せに暮らしましたとなるわけで、「こうだったらよかったのに」と思っていたものが全て詰まっていました。

思うに「触れられない」設定のピュアっぷりと、この映画に嫌な奴が一人もいないというところが、この映画の一番良かったところだと思います。ハンサムガイも社長の娘もすごくいい人達でしたしね。ここまで良いと知っていたら劇場に無理してでもいったのにな、と思いました。


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Tomoko

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Morten Harket.jp (http://www.morten-harket.jp/)の中の人。 二児の母で、フルタイム勤務しつつ、ノルウェー語の勉強をしています。 現在、NORLAからサポートを受け、ノルウェー語の詩の翻訳を実施中。

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